九州を中心に、お茶のある時間と空間を届ける”hitofuki”の活動をされている森繁麗加さん。【大分で毎週金・土に日本茶喫茶、出張茶会、お客様に合わせた茶葉の販売】と日本茶を軸にした活動が若い世代の注目を集めています。日本茶をこよなく愛し、地元九州を拠点に全国でお茶を淹れている若き茶人に、これまでの歩みとこれからの想いをお伺いしました。
【過去】
———お茶との出会いは何ですか?
「私にとって、お茶は生まれた時から生活の一部でした。美味しいからお茶を飲む。ごく当たり前のようにお茶を飲んでいたのを覚えています」
———お茶の世界に入ったきっかけを教えてください。
「私が大学3年生になったころ、すごく悩んでいた時期があったんですよ。なんで生きてるのだろうか。生きるとは何か。そんなことを悩みながら、自分が何をして生きていくのかを考えるために休学をして、色々と試してみました。でも何をしても腑に落ちなくて」
「そんなある日、いつものように急須でお茶を淹れているとき直感で“これだ!!”と思ったんです。その直感を信じてお茶の世界に入り、どんどんお茶の世界に引き込まれました」
——お茶の世界に引き込まれたとのことですが、お茶のどんなところに引き込まれたのですか?
「私の場合、“お茶を通して自分の居場所を作れた”ということです」
「自分で言うと少し変だけど、自分の持っていた魅力を、お茶を通して知れたんです。それまでは、インスタもしなかったし、言葉も紡がなかったし、写真を撮られるのも苦手で、自己表現を避けてきました。そんな当たり障りの無い私が、お茶を淹れることを通して自己表現をできるようになったんです」
「私自身がお茶に助けられ、お茶の魅力を知り、そしてこのお茶の魅力を皆んなに届けたいと思うようになりました。自分も幸せにできて、目の前の人もハッピーにできる。なんて素敵なんだろうと常々思っています」
「お茶を淹れている時間には自分自身も助けられるから、活動が続きますよね。」
——hitofukiの活動をなぜ始めたのか、当初の想いを聞かせてください。
「私はお茶の時間に救われました。そのお茶の時間をみんなにお届けしたいと思ったんです」
「多くの人が忙しく生きてしまっている。」
「頑張っているのに、自分の頑張りに気づいていない。休めていない。立ち止まらない。寝て食べて働いて、また寝て食べて働いて、みたいな」
「一度きりの人生、時には立ち止まったり、休んでもいいんじゃないかと思うんです。ただ、ゆっくりと過ごす時間が必要なことに気づけていない人が多いし、ゆっくりしてみようというアイデアすら思い浮かばないくらいみんな頑張ってるんですよ」
「そういう人が多いなと思ったから、ゆっくり湯気や水の音を聴きながらお茶を味わう、みたいなひと時を過ごすきっかけを届けて行けたらと思いました。」
「そして何より、寄り添いたい。その人の居場所になりたいと思って活動をしてきました」
「あとは、ケータイがあったり、テレビがあったりっていう現代の生活の中に、急須とお茶があるっていうのも実現したかったです」
「若い世代は”お茶を飲みたくない”じゃなくて、“お茶の良さを知る機会がなかったから飲んでいないだけ”と言うことに気づいたため、お茶の伝承スタイルに柔軟性を持たせつつ、急須とお茶とその時間が現代の暮らしに調和していけたらと思います。」
———お茶で“無になる・向き合う・自分と対話する”ができる時間を作ることができるとおっしゃっていますが、なぜ他の飲み物ではなくて、お茶がそのような時間を生むのでしょうか。
「分からないんですよ。それが分からないから面白いし、分からないけどそれが起こってしまうから、ここまでお茶が残ってるのだと思ってます。未知な自然の恵みの中で、自分たちとお茶が共存しているのが、神秘的で魅力的だと感じています」
「言葉にできないって、言葉にできない良さがあるし、言葉にしない良さもあると思うんです。少し話がそれますが、うちに来てくれるお客さん中には涙を流される方もいます。なぜだか分からないけど涙がでるみたいで。それがお茶の持つ言葉にならない魅力だと思います」
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